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「力必達」(つとむればかならずたっす)とは

擇道 竭力01

力(つとむ)れば必ず達す。
大意:目的に向って努力を続ければ、必ず達成できる。



「力れば必ず達す」(つとむればかならずたっす)は、修養の目的を達する心得を示されたもので、中庸(ちゅうよう)※1 の第二十章に「人一(ひと)たびして之(これ)を能(よ)くすれば、己(おのれ)之を百たびし、人十たびして之を能くすれば、己之を千たびす。果して此(こ)の道を能くすれば、愚(ぐ)と雖(いえど)も必ず明(めい)に、柔(じゅう)と雖も必ず強(きょう)ならん」※2 とあるのを要約されたと見てもよい。「水滴石穿(すいてきせきせん)」※3 (前に解説した)とか、スマイルス〔スマイルズ〕※4 の「天は自ら助くる者を助く」※5 とかいう句の意味にも通ずる。自力をたのんで、努力すべきことをすすめられたものであらう。「なめくじら終にのぼるや竿のさき」という句もある。



森本角蔵「嘉納先生揮毫の語句の解説(18)」『柔道』第23巻第11号(昭和27年)

原文は現代漢字仮名遣いに改めた。
漢文は書き下し文に改めた。
適宜、読みやすいように漢字を改め、句読点を補った。
〔  〕内に語句説明を補った。


※1 四書の一つ。天人合一を説く。孔子の孫、子思の作とされる。
※2 人が1回で出来ることならば、自分は100回行い、人が10回で出来ることならば、自分は1000回行う。このやり方で繰り返し行えば、不明なことも必ず明らかになり、柔弱な者も必ず強くなる。
※3 小さい力でも、積み重なれば強大な力になることのたとえ。水滴も、同じ位置に落ち続ければ、いずれ石にも穴をあけることができるという意味。
※4 サミュエル・スマイルズ(1812?1904)。イギリスの著述家。スコットランド生れ。著「自助論」など。
※5 他人に頼らず自立して奮闘努力するものを、天は助けて幸福を与える、という意味